口臭のひどかったおじいちゃん。

高齢 祖父 口臭

 

祖父が他界して5年ほど経つ。

 

高齢になると口臭がきつくなるという記事を読んで、
不意に祖父のことを思い出した。

 

祖父は78歳で亡くなった。

 

孫である私に対して、
いつも優しく接してくれたことを
感謝している。

 

 

そういえば、祖父の
口臭はどうだったろうか...
と思い起こす間もなく、

 

「口臭きつかった!」と瞬時に記憶が蘇った。

 

祖父と祖母の部屋は物だらけだった。

 

ようやく2人が座ることのできるスペースがあって、
あとは昔のアルバムや熱帯魚、服やレコードなどなど...

 

物で溢れかえっていた。

 

それは川で言ったら、
淀みでもあるかもしれないが、

 

淀みのない川がないように、
逆に淀んでいない高齢の人がいたら
逆におかしいのかもしれない...

 

祖父の口中も淀んでいた。

 

が、嫌悪するほどではなかった。

 

たまに「なんか、ニオウな」と感じたりしたが
すぐに気にならなくなったと記憶している。

 

祖父の部屋に、祖父の間合いに入り、
入って最初の瞬間だけである、
口臭を感じるのは...

 

祖父の空気になじめば、
なんのことはない、普通であった。

 

私と祖父は一緒に住んではいない。
従兄弟のおじさんの家を訪問した時に
たまに会う間柄だった。

 

口臭はもしかしたら、心の距離感が
離れていればいるほど、感じるものかもしれない。

 

「祖父の匂い」はそれは「時間を長い間過ごしてきた人」の証でもあった。

 

人並みに清潔な人だった。

 

「そんな祖父の匂い」はひとたび、
なじんでしまえば、離れがたいような落ち着きがあるから不思議だ。

 

あの落ち着き具合は、
自分が体験してきた落ち着き具合のなかでも
トップ3に入る。

 

あの落ち着き具合は、
年齢を重ねないと出せないものなんだと思う。

 

あの強烈な落ち着き具合、
最先端のマッサージチェアで体をほぐすよりも、
はるかに落ち着くことができた。

 

あきらめの先にある浮遊感みたいなもの。

 

そんな空間で祖父の淀んだ口から語られる話は、
どれも最後に笑わせてくれるものだった。

 

あきらめるのは恐かった若い私にとって、
それはそれは貴重な時間だった。

 

 

「祖父の匂い」の記憶と「初めての彼女の髪の匂い」の記憶を
天秤にかけてみた。

 

同じぐらいの記憶の強さだ。

 

どっちも好きな匂いだが、
どっちが好きかと言われれば「彼女の髪の匂い」だ。

 

ごめんなさい、おじいちゃん、祖父様。


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